純国産の金魚、日本人好みの渋い色合い・・朱文金

朱文金は、純日本産出の金魚です。多くの金魚が外国から渡来してきているので、日本産のこの品種は珍しいと言えます。

フナ尾の和金(フナのような尾を持ち、体型も細身の金魚)と三色出目金(黒・白・赤が交じった出目金)の交配で、明治25年に秋山吉五郎という金魚養殖家によって作出され
ました。本来は「朱文錦」と書き、朱(赤)と浅葱色(薄い藍色)を基調とした体色を持つ錦のような金魚という意味です。

特徴としては、和金型の体型で長い吹き流し尾とモザイク透明鱗を持ち、体色は赤・青・白・黒の雑色です。モザイク透明鱗とは、鱗には、普通鱗・透明鱗・全透明鱗という三つの
種類があるのですが、その中の普通鱗と透明鱗が混じったものです。

鱗は皮膚の一部で、外側から、表皮・メラニン色素細胞・真皮・光彩層(銀色に光る部分)の四層構造になっています。普通鱗は、最も良く見られる鱗で銀色に光るキラキラした
一般的な鱗です。透明鱗は光彩層がないため銀色に光らず、鱗自体の色だけが見える鱗です。そして、全透明鱗はメラニン色素細胞と光彩層がないため、透明で輝きのない鱗です。つまり、全透明鱗を持つ魚は、鱗内部の体色がそのまま透けて見えるということです。朱文金は、モザイク透明鱗なので、体の表面に、キラキラ光る普通鱗と光らない透明鱗が
混在しているという状態です。

朱文金と同じような体型を持つ金魚として、コメットという品種があります。コメットは琉金という丸い体型を持つ金魚の突然変異として生まれた金魚で、アメリカ産です。このコメット
と朱文金は見分けがつかないという場合が多いのですが、朱文金は三色出目金の色合いが強く残っているので、その色調で判断されます。赤・青・白・黒の雑色なんて、まさに和の
イメージではありませんか?決して派手な色味ではありませんが、青・黒が入ることにより、ちょっと引き締まった感じの印象を与えると思います。

また、朱文金は手に入りやすい品種で、金魚すくいで見かけることもあります。とても丈夫で、大きな水槽で飼えば、30センチ以上になることもあります。

ところで、朱文金には派生品種があります。派生品種というのは、この場合、朱文金を改良して作り出された新しい品種ということです。

最も有名なものは、「ブリストル朱文金」ですが、これはイギリスで作出されました。色合いは朱文金なのですが、尾に特徴があり、その形は扇型です。ハート型と言われることも
ありますが、幅の広い大きな尾なので、泳ぐ姿はとても優美です。ただ、この品種は大変珍しく、日本ではなかなか見かけることはできません。

また、朱文金とフナ尾の和金を交配させた「メタリック朱文金」という品種もあります。これは、交配の結果、朱文金特有の浅葱色が目立たなくなり、鱗もモザイク透明鱗から普通鱗になったため、鱗自体の白色が反射して銀色に見えるようになりました。そのため、この名前がつけられました。

なお、このメタリック朱文金は銀色に光ることから豪華に見え、人気もあり、本来の朱文金に対して手に入りにくいようです。